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5話 オオカミと遊んだ

作者: みみっく
2025-06-22 12:00:00

「オオカミの臭いでレティアが顔をしかめつつ、甘えたがるオオカミたちを受け入れた。彼女の心には、彼らの傷ついた姿を見た時の悲しみが薄れ、ほんの少し喜びが灯る。

 その瞬間、レティアの魔法の能力が新たな進化を遂げていた。魔法の最上位魔法とスキルが結びつき、『具現化』という新たなスキルが誕生していたのだ。レティアの魔法は、この世界に存在する全てのものを扱えるようになり、本人が意識することなくスキルが補完し、オリジナルの魔法を自在に作り出せる能力へと変わっていた。

 オオカミたちをキレイにしたいと願った瞬間、彼女のスキルはその思いに応じ、新たな浄化の魔法を作り出した。オオカミたちの体が虹色の光に包まれ、汚れや臭いが浄化され、仄かな良い匂いが漂うようになった。

「わぁ……きれいになってるね! うん、臭くなーい!」 レティアは嬉しそうにオオカミたちを撫でた。彼らはさらに甘える仕草を見せ、和やかな雰囲気が広がった。その後、彼女はオオカミたちと、追いかけっこの続きを楽しんだ。

 レティアは虹色の能力と心を通わせた動物たちによって、意思疎通ができるようになっていた。新たに手に入れたその力を活かし、オオカミたちとも遊びを楽しむ日々が始まった。ある日、彼女は笑顔でオオカミたちに無邪気な提案をした。

「オオカミさん、オオカミさん。次はねー、かくれんぼしよー♪ オオカミさんが見つけてねー!」 その提案を聞いたオオカミたちは、得意げな表情で頷き、森での遊びに意欲を見せた。嗅覚、視覚、聴覚が発達しているオオカミにとって、小動物を探し出すことは容易なはずだった。

 しかし、レティアの『虹色の能力』が、その状況を複雑にしていた。彼女の能力は万能で、小動物たちを不可視化し、臭いや物音を完全に消すことができた。レティアが作り出した小動物たちは命令がなければ動くこともなく、音を立てることがなかったため、オオカミたちにとっては手強い挑戦となった。

 オオカミたちは必死になり、森中を動き回りながら臭いをたどり、耳を澄ませて音を聞き取ろうとした。しかし、小動物たちを見つけることはできなかった。 しばらく隠れ続けても見つからない状況に、レティアは痺れを切らして頬を膨らませた。「ねぇー、ちゃんと探してよぅ……。まじめにやってよぅ!」 怒った口調で言いながらも、その表情にはどこか楽しそうな気配が漂っていた。

 オオカミたちはその姿を見て困惑しながらも、懸命に探索を続ける。一方で、レティア自身は「かくれんぼ」という遊びを心の底から楽しんでいた。虹色の動物たちを動かしながら、森の中でオオカミたちとの交流を満喫していたのだ。

 かくれんぼに飽きると、また追いかけっこ始めて森を駆け回り遊んでいた。

 森の木々がそよ風に揺れる中、小さな影が草原を横切る。その影は動きに迷いがなく、敏捷にして力強い足取りだった。現れたのは、11歳ほどの少女。焦げ茶色のサラサラとした髪はポニーテールにまとめられ、風に揺れるたび緑色のおしゃれなリボンが輝きを放っている。髪の色は落ち着いているが、そのリボンが彼女の意思の強さとささやかな少女らしさを象徴しているかのようだ。

 瞳は深い茶色で、まるで大地の強さを映し出すような色合いだが、そこに潜む険しい表情が、周囲に緊張感を与える。ふとした瞬間に、ムスッとした顔がさらに厳しく見え、他人を拒絶する壁のように映るのは彼女自身も気づいていない。だが、その表情の裏には寂しさと強い決意が隠されている。

 背丈は11歳ほどの高さで、スリムながらも鍛えられた体つきが、彼女が日々を一人で生き抜いている証拠だ。冒険用のレザー製の軽い防具を身につけ、小動物を狩るための小ぶりな弓を背負っている。その足元には泥が少しついているが、それすらも彼女の生き様を語っているように見える。

 そんな彼女がふと立ち止まり、森の奥を睨むように見据える。「ねぇ! 誰かいるの?」と強い口調で声を上げる。しかし、その声の裏には微かな警戒と不安が滲んでいる。現れたのが幼いレティアだと気づくと、眉間に皺を寄せ、さらに厳しい口調で言葉を放つが、無邪気な少女を前に、その表情は次第に柔らいでいくのだった。

 森の中、陽の光が葉の隙間から柔らかく射し込み、レティアとルシアスの間に微妙な緊張感が漂っていた。ルシアスは小さな動物の狩りを中断して、突然現れた少女をじっと睨みつけている。

「な、なに?あんた、誰よ!」と、ルシアスが少し強い口調で問いかける。その眉間に刻まれた皺と、茶色い瞳の厳しい視線が彼女の警戒心を語っていた。

 レティアはそんなルシアスの態度に少し驚きながらも、怯むことなくふんわりとした笑顔で答えた。「わたし、レティア!この森の向こうの村に住んでるの。なんか……きみ、かわいいリボンしてるね!」

 その一言に、ルシアスはわずかに動揺した様子を見せたが、すぐに顔を背けて冷たく応じる。「う、うるさい。そんなの、関係ないでしょ!」

 レティアはルシアスの心を感じ取っていた。彼女の言葉の裏にある緊張や戸惑いを鋭く察しながらも、それを責めることなく、むしろ距離を縮めるように軽やかに話を続けた。「そんなに怒らなくてもいいのに。だって、きみ……本当はとっても優しい子なんでしょ?」

 その言葉に、ルシアスは一瞬息を呑み、またすぐに反論しようとしたが、何も言えなくなってしまった。気まずそうに目を逸らしながら、「……勝手に決めつけないでよ!」と言いながらも、その声にはどこか力が抜けていた。

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